PRODESIGN  LINE  CONCEPTION
 近年、パラグライダーのライン切断という事故が問題になっています。これはパラグライダーを愛好する人にとっても、製造するメーカーにとっても大きな問題です。現在、性能の向上のためにキャノピーはより多くのセルを持ち、細く少ないラインを採用しています。そこにおおくの問題を抱えているのも事実です。プロデザイン社では、パラグライダーの製造を始めた時点から、素材としてのラインやクロスの研究、そしてキャノピーをデザインする時点での強度計算から、それらの問題点に取り組んできました。
 1988のケストレルシリーズでは、スカイダイビング用としてドロップテストを航空機から行いました。この時期に、ラインと素材の強度計算を考慮したタータルなパラグライダーの設計が、瞬間的にキャノピーにかかるGを分散し、長時間使用後の強度低下を防ぎ、トータル性能の低下しにくいキャノピーを制作するというプロデザイン社のポリシーが生まれました。
 また妥協のないデザインを生かすための素材選び、そしてそれらの素材を正しく扱う製造過程などが、すべてマッチして初めて製品が完成するのです。重要なことは、素材を十分理解してキャノピーのデザインや空力特性を含めて製造を行うことでしょう。
 プロデザイン社では、1993年新社屋建設あたり、素材メーカーの提出しているスペックさえ信用せず、独自の素材テストセンターを作り対処しています。そして以下にご紹介するのがプロデザイン社が考えるパラグライダーの製造に関する基本コンセプトです。
 ライン素材
ラインのインナーの素材には、強度と最小の伸び率が必要となるため、現在ではケブラーやダイニーマが多く使用されています。そのインナーを保護するアウターカバーは、ポリエステルで作られています。(ケブラーは、デュポン社の製品に対する名称です。一般的にアラミッドと呼ばれています。またダイニーマ、スペクトラ、HPPEなどは一般的にポリエチレンといってよいでしょう。)いかがそれらの特徴となります。
  アラミッド ポリエチレン ポリエステル
良い点
非常に少ない伸び 少々の伸び 摩擦に対して強い
強い強度
強い強度
紫外線に対して強い
良くない点
曲げに対して弱い 熱に対して弱い 伸びが多い
紫外線に対して弱い
紫外線に対して弱い
強度は強くない
 アラミッドやポリエチレンは、ポリエステルのアウターとの組み合わせにより、サスペンションラインとして使用できる。さらに上記の組み合わせは、素材としての完成度の高さや縫製方法、取り扱い方法により、その完成度を高める要素となります。プロデザインでは、現在インナーにポリエチレンを使用しています。これは長年のテストにより導かれたもので、1988年から使用し始めています。
 ラインの強度破壊
ラインの破壊は以下の2点に集約できる。
@ライン強度を無視した設計、キャノピーへの誤ったライン取り付け
A誤っているか弱すぎるラインの使用
ラインは翼端の潰れからの回復、瞬間的な潰れなどにより、破壊を起こすことがあります。これらの破壊は、パラグライダーが現在の構造を持つ以上、防ぐことは困難であると言えるでしょう。翼端部分のみのライン破壊であれば、大きな危険を生じる可能性は少ないと言えます。重大なライン破壊というのは、次のように説明することができます。仮に翼全体に大きな荷重がかかった場合、翼中央部分のラインから破壊が始まります。何故なら、より大きい翼面積を持つ部分には、より多くの力がかかり、そしてより大きな揚力が発生し、その結果としてラインにもより大きな荷重がかかっているからです。
さらに翼中央部分から破壊されたラインは、徐々に全体へのライン破壊へと進みます。つまりラインが破壊されたことにより、残されたラインの荷重分担の増加が、更なるライン破壊を招くのです。これらの理由により、ライン破壊はまるでジッパーを開けるかのごとく進行して行きます。通常、アッパーライン(キャノピーに近いラインをアッパーライン、そこからライザーのつながるラインをローワーラインと呼びます。)の荷重分担の増加に伴い、ローワーラインが破壊を起こす確立も高くなると言えます。つまり最も弱い部分から破壊が始まり、連鎖反応の様に破壊が進行するのです。残念ながら、現在販売されているパラグライダーのほとんどがスパン方向に対して、同強度のラインを使用し製造されているのが事実です。
 独特なライン配置
プロデザイン社では、強度計算やテストの結果に基づき次の方法でラインの強度破壊を防止しています。(1991年秋より)
1.スパン方向にたいするライン
 −翼端に対しては通常の太さのラインを使用
 −翼中央は通常の太さの2倍の強度のラインを使用
2.コード方向に対するライン
 −コード方向A・B・Cライン、ローワーにアッパーラインがどれだけの翼面積をささえるか計算をして同強度になるようなラインを使用
 これらのライン配置を採用することで、キャノピーに大きな荷重がかかった場合に、まず翼端からのライン破壊を起こします。しかし、十分に補強を受けた中央部分にはライン破壊が進みません。これは残された部分の翼面荷重の増大につながるものの、大きな片翼の潰れ、あるいは両翼端の潰れといった状況の中でフライトを続けることが可能になります。
 ラインチェック方法
プロデザイン社では、製造工場で方正時と出荷時に2回製品チェックを全てのキャノピーとラインに対して行っています。これらはライン強度や長さのチェックに最も効果的な方法で、プロデザイン社が自社の製品に絶対の誇りを持てる証なのです。

PRODESIGN, October 1993

 特 徴
プロデザイン社が製造段階においてどの様に強度の確保に取り組んでいるかを説明しましょう。
シームテープを使用したセル下面の縫製方法について
シームテープを使用したセル下面の縫製
縫製は目で見えない部分ですが、プロデザイン社のキャノピーには必ずセル下面の接合部分にシームテープを縫い込み強度を持たせています。これは潰れからの回復時の強度のみならず、ツリーラン時の下面の強度の維持や破れを防ぐといった二次的な要素さえ持っているのです。(リブ下面を触って頂ければ理解していただけるでしょう。)
 
セルへのVテープの縫い込みセルへのVテープの縫い込み
 ラインの強度が高められてもキャノピーからラインが抜けてしまえば意味がありません。コスト的には割高になりますが、プロデザイン社ではリブにV字型テープを縫い込み、ラインと接続しています。(エアインテークから中を覗き込むことでご覧になれます。)つまり開傘時のショックを、点で受けるのではなく面で受けることで破壊を防いでいるのです。さらに、長年に及ぶフライト後の翼変形を防ぐことにもなります。コントロールラインの取り付け部分にも同様のVテープが縫い込まれています。
 論理的に太さを替えたラインレイアウトについて
ラインレイアウト(側面)ラインレイアウト 全面 
 センターパートのA・B、特にCラインには最も強度のあるラインを配置する。
 適材適所にラインを使用することにより、安全と性能のバランスを両立することができます。アッパーとサイドの細いラインは性能向上のために、ローアーの太いラインは少ない本数で強度を確保するためといった具合です。
 それは、結果的に5種類の太さの違ったラインを使用することになりました。センターパート、ローアー中央部分側に太いラインを、コード方向にはアッパーの数に応じてローアーのラインの太さを変えるという論理的なレイアウトを採用しています。
 翼面積に対するラインレイアウト
翼面積に対するラインレイアウト 上面からの投影図を見ると、キャノピーが3つの部分(1つのセンターパートと2つのウイングチップ)で構成せれているのがわかります。さらに、センターパートの面積はウイングチップに比べて大きいことがわかります。しかし前出のライン配置を見てみると、ライン数は翼端に行くに従い面積の減少程には少なくなっていません。つまりウイングチップ部分には、少ない面積に多くのラインが取り付けられているのです。これによりウイングチップの揚力の発生に対して、必要以上にウイングチップが引き上げられることを防いでいるのです。
 全て同ラインで構成されたパラグライダーより、強度確保という点でも、性能の向上という点でも、これらの試みの優位性が理解頂けるでしょう。

 翼形に対する空気圧力の発生

迎角6度の場合迎角90度の場合

上の図は翼形に対する空気圧力の発生について説明しています。左は迎角が6度の場合、右は90度の場合(これは簡単に言えばコンスタントストールの状態と考えて下さい。)で、図の中の上の線は上面、下の線は下面の圧力変化をそれぞれの翼の部分で示し、二つの線の間の部分は、翼にかかる上下面の圧力を表しています。
 左図の通常滑空時では、上下面の圧力発生曲線の形が三角形になっています。つまりA・Bライン上に大きな力がかかっているといえます。しかし、コンスタントストール状態に入っている右図では、C・Dラインの位置に大きな力がかかっています。つまり迎角の増大に従い、A→B→C→Dと重量バランスが移って行くことがわかります。
 キャノピー全体に対する揚力の発生
揚力の発生(側面図)揚力の発生(正面図) 

 左図は通常滑空時のキャノピー上面の揚力の発生を、側面と正面からビジュアル化したものです。キャノピーの部位による揚力発生の違いがわかりやすく図になっています。(キャノピーから出ている線が、揚力の大きさと方向を示しています。)翼の中央の部分に、より大きな揚力発生が認められることがわかります。
 出荷時の最終ラインチェックの手順
 こではプロデザインで行われている最終チェックの要領を簡単に説明します。これらの工程はプロデザイン社が製造する全てのキャノピーに対し一機一機手作業で行われます。
キャノピーの釣り上げ
 初歩的なラインの取り付けミスの発見やラインの絡みをほぐす。
ローディングテスト
 工場での出荷時のテストに続き、念入りに一本一本のラインに対して、30kg荷重のローディングテスト(引っ張りテスト)を行う。ラインの縫製ミスはこの段階で発見される。次のテスト準備として、ラインをしっかり締めることで確実なメジャーリングの準備にもなっている。
メジャーリングテスト
 ローディングテストに引き続き、ここでも念入りに一本一本のラインに対し、メジャーを使い正しいラインの取り付けを確認する。5kgの荷重をかけ、最大10mmの誤差を越える場合は、調整または部品交換が行われる。さらに左右のライン長のバランス取りも同時に行う。
チェックリスト
 一機ごと、全ての工程に、担当者が終了のサインをする。これにより、ミスの発生と再発を防いでいる。

こうして丹念に作られ、一機一機チェックされたパラグライダーが、皆さんの元に届けられるのです。これからもプロデザインを宜しくお願いします。

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