憧れのヨーロッパツアーに参加して   BY 山田 昌美

 
 ヨーロッパツアーはパラを始めた18歳の頃からの憧れでした。学生時代はお金がなく、社会人になったら時間がなくて、毎年ツアー参加者を羨ましく思っていました。そんな私が今年参加を決めたのは、今シーズン飛ばなければ、私は本当に飛べなくなってパラを辞めてしまう、と思ったからです。最近は飛びたいのにペーパードライバーの様に飛ぶのが怖くて仕方がなくなっていたので、辞める可能性があるなら、どうせならやりたいことをやってから考えよう、このツアーで怖いだけだったら辞めよう、楽しかったら続けて、ワーキングホリデーで行くフランスで一回でもいいから飛んでみよう、と決めて受付締め切りの直前に申し込みました。
 結論から言えば、今回のツアーに参加して本当に良かったとしみじみ思います。天候に異常なほど恵まれたこともあって、予想していた以上に飛べたからです。イチかバチかが当たった感じです。今回のツアーのテーマは、「心の趣くままに」でした。(臭い言い方ですが…)自分が飛びたいように飛ぼう、自分に無理強いをしない、そう心がけました。
 そして、まず記憶に残っているのが、やはりヨーロッパ初フライトです。去年の10月から飛んでなかったので、いざ飛ぼうにも、私は立ち上げできるのかな???とかなり不安で、
中台さんにその事を言ったら、なんかお顔が引きつっていたような・・・。でも、ノイッシュのテイクオフに上ってみると、一面に桜草などの原種が咲き乱れているし、いかにもヨーロッパと言わんばかりの景色が広がっていて、どうもそれで不安も和らぎ、いざ初フライト。ぶっ飛びOK!と言い聞かせ、中台さんの細かい指示のもと、なんとかランディングした感想は、1年分飛んだー!!と思うぐらいの満足なものでした。
 でも、慣れてきた2日目には、やっぱり上げたいよー・・・、と欲がでてきてしまいましたが、嬉しいことに1時間近くフライトでき、これまた満足!恐る恐る回してみたら、予想以上にサーマルが大きくて、雑で荒い私の旋回でもどんどん上昇し、ふと気付けばランディングから見上げていた山頂と同じ高さまで上がっていました。そんな嬉しくも恐ろしい思わぬ状況と寒さの為、上空で手が震えてきてしまい、降りたいよー!!と何度も心の中で叫びました…。やっとの思いで(大げさですが本当です)ランディングしたその瞬間、安堵と疲れでその場に倒れこみました…。
 3日目のアッヘンゼーのフライトも感激でした。テイクオフが絶景だったんです。なんとかこの景色を写真に撮りたい、でもパノラマでも入りきらない。じゃあそれなら、と思いついたのが、自分を軸にして360度ぐるーっと回りながら15枚の写真を撮り、それをつなげて長さ約70cmの大パノラマ写真が完成しました。職場や家族友人にもかなりの好評でした。もう1つの感激は、湖面の色が浅瀬から中央の深い部分にかけてエメラルドグリーンのグラデーションになっていて、これがむちゃくちゃ綺麗で見とれてしまうぐらいだったんです。そして、命がけで(私にとってですが)これも写真に撮ることが出来ました。かなりの満足。でも、中台さんはみんなを無事にランディングさせるのに、とっても大変そうでした。中台さんは肝っ玉が大きいのね、と感心していたら、男性陣で「誰が一番長く冷たい水に足を浸けていられるか大会」をやり、言い出しっぺの中台さんは呆気なくビリになられまして、肉体の衰えにはなかなか勝てないようでした…。なんて、すいません中台さん。

 そんなこんなで、予想以上に飛べていたので3日目には、もう勘弁して!もう十分だから観光させて、と本気で思ったら、翌日は雨。ラッキーと思いきや、飛べないとなると、やっぱり飛びたくなって、ぶっ飛びでもいいから飛ばせて!と思えば、さらに翌日本当にぶっ飛びが出来た、と言うような余程日ごろの行いがいいのかと勘違いしてしまうぐらいでした。

 そして最終日。シュリック2000から向かいの山のノイッシュまで初めてミニクロカンをやりました。テイクオフしてすぐに上げることができ、山頂にいたハイカーと手を振り合ったりして楽しんでたんですが、もうちょっと、と欲張っているうちにどんどん高度が下がってしまいました。慌ててノイッシュに向け移動しましたが、もしかしてノイッシュの尾根に付けずにこのままランディング?と諦めかけていたその瞬間、ゆさゆさ揺れる木を発見。うわっ!サーマルだ!絶対外さない!と意地になって回してみたら、これが当たり。他の機体も寄ってきましたが、私が見つけたサーマルだもん!譲らないよー!(かなり自己チューですが)と、無我夢中で回して、気付いたらテイクオフと同じ高さになっていました。
途中何度も4m/s以上のサーマルに当たり、あまりの激しさに上空で何度も絶叫していたら、ウソかホントかランディングの中台さんにまで聞こえたという話…。

 そうこうしている内に、また山頂と同じ高さまで上げることが出来、上空でかなり満足していたら、ハングが4機ほど参加してきました。私はハングと一緒に飛んだ経験が殆んどなくて、ただでさえパラがうじゃうじゃいて、怖いしどう回したらいいのかわからないって言うのに、ハングなんてもっての外。怖いからもう降りようと無線も入れ、ランディング近くまで行ったら、思わぬところでサーマルに当たり、当たれば回してしまい、そして上がれば、それならばさっきからあまり上がってないハングが降りるまで頑張ってみようと。
 
 また山頂付近まで上げて、上空で満足していたら、何かサーっと遠くを通り過ぎるものが…。よく見れば、今度は一台のグライダーが参加してくるではないですかっ!NOーーー!!!  むちゃくちゃ速いし、旋回も大きいし、私の真下を通り過ぎたり、離れていても向き合った時は恐怖。中台さんに無線で報告したら、「あー、そりゃ俺の友達かもなあー。まさ、写真撮れるかあー?」 NOーーー!!! 「そんな余裕はありませーーん!!!」 「じゃ、ぶつかると死んじゃうから、まさ気を付けてなー」 NOーーー!!! もう気分はサメに襲われ慌てふためく小魚のよう…。ああ、ヨーロッパってなんてスケールが大きいのかしら…、と上空で実感した瞬間でした。その後ちょっとは頑張ってはみたものの、思いっきり揺らされる中、回そうにも左右はパラに挟まれ足元にはグライダー、という状況に追い込まれ、もう、あかん…、と私の限界を超えました。2時間近く回し続けていたら、足はしびれてくるわ、腰は痛いわ、首はバキバキなるわ、ご老体が悲鳴をあげていました。やっとの思いでランディングしたその瞬間、今度は後ろに倒れ込んでしまい、ハーネスが重くて起き上がれず、亀がひっくり返ってバタバタするのとそっくりな状態でもがいていたら、どうやらまた笑い者になったようでした…。でも、あーー!もう満足!!!その一言でした。
 今回のツアーで私が感じたのは、サーマルなどすべての規模が大きいので、サーマルをつかみ損ねてもやり直しが効いて、多少の失敗を恐れずにのびのびと飛ぶことが出来たと言う点が、私にとってのヨーロッパエリアの魅力でした。
 また、中台さんがちゃんと見ていて下さる、そして的確な指示により危険を回避出来ると言う安心感、また一緒にツアーに参加した皆さんが、良い状況の時私を優先的に飛ばさせて下さったのも、今回のツアーでいい飛びが出来た要素だと思います。
 こうして私の初ヨーロッパツアーは、とても満足したツアーとなりました。なので今の時点ではパラをまた続けていこうと思っています。腰と相談しながらですが。このツアーで撮った写真は私の宝物です。